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9/30 人形の家

2008年10月01日
ロープと絵が同じ人

2008年9月30日『人形の家』@Bunkamuraシアターコクーン

作:ヘンリック・イプセン
演出:デヴィッド・ルヴォー
出演:宮沢りえ、堤 真一、山崎 一、千葉哲也、神野三鈴、松浦佐知子、明星真由美 ほか

9月5日→1回目


あー強くて美しいな、宮沢りえ。
もうどんどん、凄くなってる。
どんどん自由になってる。
私やっぱり、あんな綺麗な人って見たことがないかもしれない。
白く光ってるもん、宮沢りえは。
発光してる。
その光が、女らしく柔らかくて、でも強くて、凛々しい。凄い。
しがらみから解放されて、飛び回ってるような雰囲気。

私が舞台で実際に見た宮沢りえは、『ロープ』と『ドラクル』(映像だと透明人間の蒸気も)。
そしてこの『人形の家』、一歩一歩、確実にえらいこっちゃになっております。
もの凄い女優さんだ。

実は一番印象的だったのが、カーテンコールでの宮沢りえ。
私は堤ファンで、つっつんは通常舞台から見たら下手側にはける。
宮沢りえは逆。上手側。
でも、宮沢りえを目で追った。

カーテンコールでは、階段から宮沢りえが駆け下りてきて、
舞台に上がったのと同時に、観客がわーっと立ちだした。
堤さんのトルヴァルあっての、宮沢りえのノラだっただろう。
ってのは、ファンとしても言っときたいし、事実そうだとも思うんだけど、
宮沢りえの登場と同時にスタンディングオベーションになる観客は正直。
正しい。
私も思わず、立っちゃった。

私の席からは、実際に涙を流していたかどうか?
ってのは、肉眼では確認できなかったけれど、
でも彼女が、胸いっぱいに感動してるのはこれでもか、ってほど伝わってきた。
なんかその様子が、凄く純粋で、綺麗で。
色んなしがらみを乗り越えて、余分なモノを削ぎ落として、
それで辿り着いたシンプルだけどこれ以上ない美しさ。
そんなようなものが、全身から溢れ出ていた。

宮沢りえって特別な人なんだな、って。

そういう特別な人の特別な瞬間に観客として出会えたことは幸せだけど、
私は、どう頑張っても一生あの場所には到達できない。次元が違う。
ってのも感じて、悔しくもなった。

宮沢りえは、4回ぐらいあったカーテンコールの最後、
はける前に一度止まって、客席に向って、舞台に向って、
深々とお辞儀をしていた。
私が一番印象に残ったのが、ここ。
宮沢りえの気持ちを、受け取れたような気になった。

初日と、千秋楽だけを見る。っていう変な見方をしてしまったけれど、
やっぱり進化していたのを感じた。深化って感じかな。深くなった。
初日の時点でも十分感じられた、一人一人の感情が、
メリハリが増して、もっと鮮やかになっていた。

それだけでも、舞台から受ける印象がだいぶ変わる。

シャープになった感じ?
感情の揺れの変化。
きちんと引かれていたけど、曖昧さもあった輪郭線が、
もっとピシっと引かれるようになっていた、というか。
明確に起伏を感じた。

もっともっと自分自身がベストの状態で、この舞台を何度も見たら、
本当に面白かったと思う。
でも今私が一番見たいって望むのは、ここではなくなってきてるんだなぁ。
演劇って世界の中で、あっちゃこっちゃに興味が移るよ。
今はもちろん、宝塚!
自分が興味を抱くところも変わってきているから、
それも感じ方に少なからず影響を与えているんだと思う。

話しは舞台に戻って、ノラがマカロンを食べてるのとかも、
これから訪れる、サイン偽造・手紙騒動の序章だよなぁー。

トルヴァルは、ノラが甘いものを食べるのを禁止している。
でもノラはトルヴァルに隠れて、マカロンをほお張る。

夫の目を盗んで、禁止された行動に出る。
っていう点ではマカロンも、借金も、実は同じ。
ノラには元々そういう面があったんだよ。

ノラはなんだか、死ぬか生きるかの極限状態をスコンと超えてしまって、
真っ白になった人のように見えた。

トルヴァルに借金の事、サインを偽造したこと、
それがバレたら、きっと彼は私のことを庇って罪を一手に引き受けてくれるはずだけど、
でもそんな事を愛する人にさせたくはない。
だから自分が死ぬ。
だからランクに「ゆっくりおやすみ」って言ってもらった。
自分もすぐに後を追うから。
ランクが被っていた黒の帽子は死の象徴。
ノラは一度その黒い帽子を被ってから、またランクに返している。

ノラが願っていた奇跡(同時に恐怖)は、この罪を一手に引き受けるトルヴァル。
だったんだけど、そこを見事に砕かれる。
それまで信じてきたモノがいとも簡単に崩壊した時、
今までのノラも壊れて、まっさらな状態に戻る。
まっさらに戻った時、初めてノラは自分の足で立った。
トルヴァルの罵倒を受けている時に、ノラは今までの自分を超えてしまったんだと思う。
途中から、ノラとしての居方がはっきりと変わったから。
四隅に追い詰められ、怯えていたノラに急に自我が芽生えて、その瞬間から立ち方が変わる。
この変化が鳥肌モノだった。

このトルヴァルの変わり身が本当にひどくてねー
だってさ、ノラを罵るちょっと前に、
「君に大きな災難が訪れれば良いのに。
 そうしたら、僕が君を守ってあげられる・・・(そうやって君への愛を証明するんだ)」
ってなことを、言っていたのに、そのすぐ後に、あれですよw

これと同じぐらいひどいのは、ランクに対する言葉ですよね。
堤さん、演じててこの辺が一番納得いかなかったんじゃないかな?
友達にすぐ死が迫っているのを知って、一瞬悲しむけど、
でも「僕達のためにはこれで良かったのかもしれない。」と言ってのけますからね。

僕達!?僕の為だけでしょ!?

っていう。
良い男ぶってるけど、実際姿形はホント良い男だけど、
中身は自身の名誉だけにしか、関心がない、いけ好かない男なのだ。
姿形が良いから、騙されるけど。いや、騙されても良いかー

各役者さんが、同じ方向を向いて、同じように役を掘り下げていった結果が、
この舞台に全て現われていた。
大人な、味のある、深い舞台だったなー。
お疲れ様でした。
映像で見れることがあったら、これはまたキチンと見たいと思います。
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