FC2ブログ

4/27 どん底

2008年04月27日
どん底

2008年4月27日『どん底』@Bunkamuraシアターコクーン

原作:マクシム・ゴーリキー
上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:段田安則 江口洋介 荻野目慶子 緒川たまき 大森博史 大鷹明良 マギー
    皆川猿時 三上市朗 松永玲子 池谷のぶえ 黒田大輔 富川一人
    あさひ7オユキ 大河内浩 犬山イヌコ 若松武史 山崎一

4月15日→1回目


あぁ、やっぱりもう一回見に行って正解だった。

なんか色んな事、色んな人が哀しくって、おかしくって、切なくって、愛おしかった。
哀しいし、切ないんだけど、優しく笑える自分も居て、
その事がちょっと暖かくって、嬉しくって、心地良い。
本当に良いお芝居だね。

今年は、初当たりが『春琴』。
二本目が『どん底』かもなぁ。

一回目とは全然違う捉え方ができたと思う。
違うっていうか、見ていてすごく楽だった。
大体どんな立場に居て、どんな性格をしている人なのかがわかっていたから、
情報として言葉を聞いている部分がない。
そして、結末も知っていた。
だからこそ、切なく、愛おしく感じた部分があった。

特に役者(山崎一)かな。
2幕途中で、ルカーは希望を持ち、真実を探し続けた人間が、
絶望し、最後に自殺してしまう話をする。
『あぁ、これは役者の行く末を暗示するような話なのかもしれない。』
と思えるし、
役者は、お祈りをする弟(黒田大輔)に「俺の分も祈ってくれよ。」と頼む。
ここも役者の死を予感させる。

ここだけじゃなく、全てがこんな調子。
背景を知っているから、
「あ、だからこんな台詞を・・・」、「だからこんな行動を・・・」、
っていうのが、そこかしこにたくさん。
細かいところを追っていくのが楽しくて、今日も3時間あっという間に過ぎてしまった。
もう生では見れないけど、これ、もう一回見ても、やっぱり面白い芝居だと思う。
発見したり、深まったりするはず。

ルカー(段田安則)がみんなの前から姿を消すタイミングと、さりげなさが凄く好きだ。
ワシリーシャ(荻野目慶子)がナターシャ(緒川たまき)にひどく暴力を振るい始め、
サーチン(大森博史)たちが止めに行く。
「ペーペルを呼びに言った方がいいんじゃないか?」

「そうだな、わしもすぐ行くよ。」

そんな一言を残して、吹雪の中、とことこ歩いて消えちゃうんだルカーは。
なんでこのタイミングで彼は、いなくなっちゃったのかな。
ルカーって一体、誰?なんなんだろう。
もうホント、良くわからない人だけど、とにかくチャーミングなじいさんだ。
もしくはチャーミングな神様だ。

ルカーは木賃宿にやってきてすぐ、
カチューシャの歌を歌っていた。
ルカーはこの宿に、初めから「力」を持ってきていた。
そのことに気がつけただけで、2回見た甲斐がある。

ルカーが宿の中で初めに救いを与えたのは、役者だと思う。
役者が希望を持って、宿の外に出ようとした時、口にした歌もカチューシャだった。
「りんごの花ほころび♪」と歌いながら、外に出て行ったんだ、役者は。
歌の使い方が、全くもって上手い。

私は段田安則贔屓だけれど、ひいき目を除いても、
段田安則ありきの芝居だったと思う。

あのユーモアと軽やかさをしっかり表現した段田さんと、
段田さんにその役を与えたケラさん、ここがまずばっちりハマっていた。
ヴァージニアウルフに続き、良いですよ。良すぎですよ。

「ほうきはどこかね?」
「(おう、こんなところに!)」
のくだりの驚き方とか抜群。
他の場面でのずっこけ方とか、笑い方とかもそう。
ルカーの存在が重たく、説教臭く、暑苦しくならなかったのが、
この作品を成功に導いた大きな要因だと思う。

帽子屋(マギー)の飄々とした雰囲気も好きだったなぁー
死にたいしても冷静というか、ある意味無関心。
貧乏暮らしもそこまで嫌ではなく、今の生活にそこそこ満足している。

アンナ(池谷のぶえ)の死に気づいた時のそれぞれの反応ってのも、面白かった。
メドヴェージェフ(皆川猿時)とか、力のない手に触れてるのに、
全く死んでることに気がつかないからね。
更に「今日は顔色良いんじゃない?」とか言ってるし。(笑)
帽子屋なんかは、「人はいつしか死ぬんだよ。」とか、
みんなの前では言って、動揺もしていなかった風だけど、一人だけになったとき、
「ホントに死んじまったのか~?」と呼びかけて、返事がないのを確認して、しょぼんとする。
本当にそれぞれ。

『どん底』、何が面白かったんだろうなぁ。
人がいて、でまた、人と人の関係が細やかに感じられた。
それが面白かったのかもなぁ。

まず「人」がしっかりしてた。
見ていれば、その人がどんな人なのかがわかった。
錠前屋(大鷹明良)とかもね、口ではアンナを罵倒してるけど、
心は常に心配してるのがわかったし、
靴屋(富川一人)なんかも、『あぁ、おバカなんだな。』とすぐわかる。

そこから更に、微妙な関係が見えてきたのが面白かったのかもしれない。

ペーペル、ワシリーシャ、ナターシャ、大家(若松武史)の関係だったり、
万頭(犬山イヌコ)とメドヴェージェフの関係だったり。
パンフレットを読んだ限りだと、これはケラさんが加えてくれた、微妙な人間関係の線。
点と点だけじゃなくて、そこから線が出て、
その線によって、点と点が微妙に繋がっているのが見えて、
それがきっと面白かったんだ。

ルカーがやってきて、
まず点の力を大きくして、そこから線の力も強めた。
強まったところでルカーは消えて、その時既に彼らの中には若干の希望が宿っていた。
そしてその希望が最高潮に高まったところで、
役者の自殺が明らかになり、また希望が消える。

カチューシャを歌いながら、衛生局の男(大河内浩)を追い詰める。
ここが最高潮。
そして、すぐ訪れる落下。
このコントラストがまた衝撃的で良いんだよね。

面白いよ、面白いよ、『どん底』。

おっさん達が本当にイカしてます。
ステキおじ様がたくさんいる舞台でした。
特に私はサーチンが好きでした。
ルカーに自分の罪を告白している時の、枯れた切ない表情なんてたまらん。
尻を出さない皆川猿時を見直した芝居でもありました。

あれ、この流れだと皆川氏の尻ネタで終ってしまう。
まぁ、いっか。
とにかく面白かったの、どん底。
Comment

管理者のみに表示